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近隣のアジアで「劣勢」はまずいでしょ

今月(2025年3月)、カンボジア、ラオス、ベトナム3カ国の主要な観光地を訪れる機会があった。カンボジア、ラオスは初めての訪問となったが、想像していた以上に観光地として開発が進んでいて、老人から子どもまで、幅広い欧米人旅行者がどこでも目立った。もちろん、トータルな入国者数としては、隣国のタイ、ベトナム、中国が多いが、観光地で目立つわけではない。都市部を中心に、植民地時代の文化が残り、生活インフラの向上もあり、欧米系高齢者(年金受給者)の長期滞在組が一定数住み着いて熱帯のスローな日々を満喫している様子もある。
なるほど、カンボジアやラオスは熱帯地域に位置しており、暑い。しかし、3月はまだドライシーズンの終盤にあたるため湿気は思いの外少なくて、直射日光を避ければそれほど厳しくはない。問題はついついビールを飲みすぎることでしょうか。歴史的には、厳しい状況にもありましたが、カンボジアとラオスは仏教徒国であり、日本人にはとりわけ親しみやすい。ただし、私もそうですが、平均的な日本人の仏教についての理解は深いとは言えないので、多少なりとも再勉強して訪れることをおすすめします。

さて、日本からのカンボジア、ラオスへの旅行者はまだまだ多くない状況です。2024年のカンボジアへの日本人旅行者は11万人で、ランキングは10位のようです。アンコールワットのような強力な観光資源を持たないラオスへの日本人旅行者は遥かに少ないでしょう。日本からの直行便は、カンボジアのプノンペンへもラオスのビエンチャンへも飛んでいないため、日本からは中国、ベトナム、あるいはタイ経由で入ることが一般的です。私の場合は、往路はホーチミン、帰路はハノイを利用することになりました。
そんなわけで、ビエンチャンからハノイへのフライトを待っていましたが、ビエンチャン空港でのフライト情報を眺めていたときに驚きの発見がありました。なんと、ソウル、釜山へのフライトが共同運航便も含めて一日3便もあるではありませんか。カンボジアならまだ理解できますが、なぜラオスにそれほど需要があるのでしょうか?
近年の韓国人旅行者数の拡大には、大韓航空とアシアナ航空(大韓航空と合併)の主要キャリアだけではなく、チェジュ航空、ジンエアーといったLCCの躍進ぶりも見逃せません。まさに、需要がなければ自ら作り出すという迫力で路線網を拡充させています。その結果として韓国人海外旅行数の拡大に大いに貢献しています。JALなどは、経営破綻を経験しているだけに、安全性に加えて「採算性」を重視する姿勢は当然としても、日本と各国、とりわけ、近隣諸国との人的コミュニケーションの中核となる直行便の確保へ知恵を絞ることは国益の観点からも重要です。そのためにLCCが果たす役割も大きいはずですが、JALとANAの傘下に入ったことで慎重姿勢だけが目立つようでは、その存在意義を問われかねません。

2024年の訪日外国人旅行者数は過去最高の3687万人。おそらく2025年には4000万人は軽く突破し、5000万人に迫ると思われます。文句なしの観光大国です。これは、それだけの観光資源が日本にあるという証明でもあり、素晴らしい限りです。一方、2024年の日本人出国数は、1301万人。入国者数の3分の1程度です。外国人の入国者数が増えただけでなく、日本人出国者数が大幅に減っていることが原因です。この1301万人の出国者数というのは、1994年の1357万人を下回っています。失われた30年は、こんなところにもありました。「円安で海外旅行などとんでもない」と考える人もいるでしょうが、今の時代、1年間のうちに、人口の10人に一人しか海外に出かけない国が日本以外のOECD加盟国にあるでしょうか?なるほど、日本人のパスポートの保有率、わずかに17%という事実を裏付けてはいます。
当たり前ですが、外国人を国内に迎えるだけでは、明らかに不十分。これから発展を目指す、カンボジア、ラオスを含めた多くの新興国は大いに日本に期待しています。観光客としてでも、彼らの成長に貢献し、そのことが両国関係を発展させることにつながるはずです。そこに日本人がいる、日本があるというプレゼンスは単純だからこそ、非常に重要な意義があります。
ビエンチャンのメコン川河畔には、日本人が経営するバーがあり、自家製ブランドLAODIのラム酒を提供しています。カリブ海名産のラムがなぜラオスで?との疑問も一瞬よぎりますが、ラオスで生産されるサトウキビを原料に、品質改良に取り組んだ結果、多くの品評会で受賞するまでになっています。たしかにメコン川のラムは美味かったし、海外で活躍する日本人に出会うのは嬉しい限りです。これも、その原点に、冒険心、チャレンジ精神がなければ始まりません。山手ネクスト(Y-NEX)では、インバウンド需要だけではなくアウトバウンド市場の拡大、促進にも目を向けたいと考えています。
