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日本入出国の今日的事情

訪日客激増、今年は3500万人
昨今の訪日観客の激増ぶりは、統計上でも日常の肌感覚からもあまりにも鮮明だ。観光庁が11月20日に発表した訪日外国人統計の10月速報値では、今年10月までの累計で早くも、3000万人を突破したということだ。年間では昨年実績を1000万人上回る3500万人の来日が視野に入る。
訪日客の多くは、もちろん、成田や羽田、関西空港と言った主要国際空港に到着し、それぞれの目的地に向かうことになる。ただし、もう少し幅を広げて外国人が入国した場所を眺めてみると意外な発見がある。想像以上に近隣国から地方空港への直接乗り入れによる入国は多いし、海路での入出国もそれなりにある。
外国人入国/日本人出国空港(港)ベスト20
ここでお見せする「外国人の入国と日本人の出国空港(港)ベスト20」は法務省が公表している2主要空港及び港別の外国人入国者数と日本人の出国者数(2023年版)から抜粋したものだ。まず、2023年に外国人入国者数の合計は2583万人であった。一方の日本人出国者数はわずかに962万人でしかなく、その差は実に2.7倍である。この広がりつつある格差については、極めて深刻に受け止めるべきだと考えるが、これはまた別の機会にお話したい。
2023年 外国人入国数 空港(港)ベスト20 | ||
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港・空港 | 外国人入国数 | |
1 | 成田(空港) | 8,036,214 |
2 | 関西(空港) | 6,525,181 |
3 | 羽田(空港) | 4,657,583 |
4 | 福岡(空港) | 2,677,005 |
5 | 新千歳(空港) | 1,229,709 |
6 | 中部(空港) | 838,842 |
7 | 那覇(空港) | 807,685 |
8 | 比田勝港 | 120,147 |
9 | 仙台(空港) | 111,637 |
10 | 高松(空港) | 89,086 |
11 | 博多港 | 80,194 |
12 | 熊本(空港) | 71,876 |
13 | 関門(下関) | 45,580 |
14 | 小松(空港) | 41,066 |
15 | 岡山(空港) | 38,305 |
16 | 北九州(空港) | 37,778 |
17 | 長崎港 | 35,449 |
18 | 広島(空港) | 34,641 |
19 | 松山(空港) | 33,896 |
20 | 函館(空港) | 27,005 |
その他 | ||
総計 | 25,830,810 |
2023年 日本人出国数 空港(港)ベスト20 | ||
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港・空港 | 外国人入国数 | |
1 | 羽田(空港) | 3,440,909 |
2 | 成田(空港) | 3,030,384 |
3 | 関西(空港) | 1,661,870 |
4 | 福岡(空港) | 546,160 |
5 | 中部(空港) | 500,677 |
6 | 新千歳(空港) | 63,975 |
7 | 那覇(空港) | 55,184 |
8 | 博多港 | 39,911 |
9 | 金沢港 | 32,201 |
10 | 高松(空港) | 23,617 |
11 | 仙台(空港) | 22,572 |
12 | 横浜港 | 21,884 |
13 | 広島(空港) | 19,389 |
14 | 石垣港 | 15,601 |
15 | 静岡(空港) | 12,314 |
16 | 鹿児島港 | 11,919 |
17 | 松山(空港) | 10,499 |
18 | 岡山(空港) | 10,393 |
19 | 関門(下関) | 9,632 |
20 | 小松(空港) | 9,410 |
その他 | ||
総計 | 9,624,158 |
外国人入国は分散、日本人出国は羽田、成田に集中
外国人が日本に上陸する入国地のベスト5は、1位成田803万人、2位関空652万人、3位羽田465万人、4位福岡267万人、5位札幌(新千歳)122万人といずれも100万人以上となっており、上位5空港で全体の約90%を占めている。これに続く、6位中部83万人、7位那覇80万人が、50万以上のメジャーな外国人入国空港となっている。
一方、日本人の出国地の順位では、1位羽田344万人、2位成田303万人、3位関空166万人、4位福岡54万人、5位中部50万人となる。やはりビジネス需要が多い、羽田、中部の順位が上がっている。日本人の出国は上位5空港に極端に限定されており、なんとその寡占率は95.4%にもなる。とりわけ地方路線網が充実する羽田は首都圏以外の住民以外にも利便性が高く、成田を上回る35.8%と存在感を高めている。この他の空港は、6位の札幌であってもわずかに6万人の出国に過ぎず、日本人にとっての国際空港とは言い難い。札幌は緯度が高く欧米へのアクセスでは本来地理的優位性があるのだが全く地の利をいかせていないのが現状だ。
外国人の入国では、成田と羽田を合わせても占有率が49.1%と50%に満たなかったが、日本人の出国では合わせて、67.3%と2/3を超えている。また、全体では2.7倍だった外国人入国者数/日本人の出国者数の比率が、羽田では1.4倍まで縮まっている。驚くべきことに、この外国人の入国と日本人の出国比率は、札幌では19倍、那覇は15倍まで拡大する。札幌や那覇では国際線を利用するのはもっぱら外国人客ということだ。
海路での入国もそれなりに
出入国は空からだとは限らない。外国人の入国地の8位(12万人)は比田勝港である。どこにあるか分かりますか?自信を持って言えるが、ほとんどの日本人は、比田勝港を知らないでしょう。しかし、多くの韓国人にはおなじみだ。海路で日本を訪れる韓国人がまず立ち寄る対馬北端の港である比田勝港だ。何十年も前から、少なくとも私の訪れた20年くらい前からは、対馬への観光客の主力は韓国人である。
残念ながら、比田勝港から韓国に向かう日本人はほとんどいない。(わずかに1000人程度)対馬と対岸の釜山の人口・経済規模の差があまりに大きいが、国境の島がどれほど半島側とつながっているか、その事実が十分知られていないようだ。比田勝港と同様に、韓国との交流の盛んな博多港が外国人の入国地11位(8万人)にランクされている。こちらは、日本人の出国も4万人となっており、ある程度の双方向性が維持されているのはよかった。他にも関釜フェリーで知られる下関も13位。(4.5万人)
地方空港もインバウンド需要を支えているが
日本の多くの地方空港では、ソウルや台北、中国の主要都市を中心に定期路線を就航させており、9位仙台、10位高松、12位熊本、14位小松、15位岡山、16位北九州、18位広島、19位松山までが2023年において、3万人以上の外国人入国者を受け入れている。主要空港を回避し地方都市に直接乗り入れられることは、混雑を分散できるなど双方にとってメリットが大きい。また、現状の一方的なインバウンドへの偏重が少しでも是正され双方化できれば、路線網の拡充が進みさらに厚みのあるものになるはずだ。インバウンド需要の拡大を確実で持続的なものにするためにも、現在低迷している日本からのアウトバウンド需要の喚起が求められている。
羽田空港

新千歳(札幌)空港

横浜港大桟橋
